治療の注意点 Important
治療の注意点
義歯として機能性や審美性が高くさまざまな方がご希望されるインプラントですが、インプラントによる治療にもいくつかのデメリットがあります。治療前にこうしたポイントを知っていただき、そのうえで治療を受けるかどうか判断していただきたいと考えています。インプラントによる治療は、歯科医院によって価格や治療方法、それに技術の高さなどがそれぞれ異なります。患者さまにとっては、歯科医院を選択する時点でリスクを負っているといえるかもしれません。
また、手術をともなうために避けられないリスクがあるほか、治療期間が長く、自費診療なので価格が高いというデメリットがあります。長期的な予定が入っている方や、ご予算の都合が難しい方は検討の必要があります。
インプラントの良い面だけでなく、デメリットになり得る点もしっかりご理解いただいたうえで、歯科医師にご相談していただきたいと思います。
インプラントによる治療のデメリット
さまざまなメリットがあるインプラントによる治療ですが、一方で患者さまにはデメリットがあることも知っていただきたいと思います。適切な環境のもとであれば安全性が高い治療方法ですが、歯科医療である限りどうしてもリスクをともなうことになります。メリットとデメリットの両方をご理解いただいたうえで、インプラントによる治療を受けるか判断していただきたいと考えています。
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治療期間が長い
インプラント体と顎骨が結合するのを待つ期間があるなど、インプラントによる治療は長期にわたります。治療する箇所や症状によって治療期間はさまざまですが、場合によっては6ヵ月ほど治療が続くケースもあります。予定が立てづらくなることも考えられるので、大事なスケジュールが入る場合は注意しましょう。
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手術が必要
顎骨にインプラント体を埋め込むという、外科的な手術が発生します。痛みを軽減するために麻酔を使いますが、持病がある方や妊娠している方などは手術ができない可能性があります。また、手術に強い恐怖心を覚えるという方も、事前に歯科医師にご相談ください。
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自費診療のため治療が高額
入れ歯やブリッジには保険診療がありますが、インプラントによる治療は原則的に保険診療が適用されず、自費診療となります。また、治療が終わった後もメインテナンスに通うことになるため、事前に治療にかかる費用を把握しておく必要があります。
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感染症のリスク
手術は清潔な環境の中で行なわれますが、感染のリスクは常にともないます。
また、治療が終わった後もインプラントの周囲が細菌に感染すると、インプラント周囲炎とよばれる症状が起きてインプラントが脱落してしまうおそれがあります。日頃から適切に歯磨きし、定期的にメインテナンスを受ける必要があります。
治療を受ける医院選び
インプラントによる治療は自費診療となるため、技術や知識は歯科医院によって差が生じる場合があります。患者さまとしては、信頼できて技術のしっかりした歯科医院に治療をまかせたいと思うでしょう。しかし、医院の看板だけでは理想的な治療を受けられるところなのか判断するのが難しいと思います。
歯科医院を見極めるのに有効な情報として、まずは先端的な設備の有無が挙げられます。歯科用CTなどが用意されているところであれば、検査体制がしっかりしている可能性が高いと考えられます。また、インプラントによる治療の情報を収集し、勉強会に参加してスタッフ間で共有していることも大切な要素です。
また「低価格」を売りにする歯科医院には注意が必要です。インプラントによる治療で大切なのは治療技術や治療中・治療後のサポートです。価格の低さだけを判断材料にせず、どのような体制で治療をしているのか確認するのがよいでしょう。
手術におけるリスク
インプラント体を顎骨に埋めるには、外科的な手術を行なうことになります。インプラントによる治療に限りませんが、どれだけ安全性に配慮する歯科医院であっても手術にはリスクがともないます。
手術中のリスクとしてまず挙げられるのが、治療計画のミスです。当院では歯科用CTを使ってお口の中を検査し、手術時に血管や神経を傷つけないよう組織の位置を確認します。この検査が丁寧に行なわれていないと、神経や血管を傷つけて神経麻痺が起きたり、インプラントが上顎洞に突き抜けて炎症を起こしたりするおそれがあります。
また、手術時に患部から感染するケースもあります。もちろん、徹底的に衛生管理された個室で手術を行ない予防に努めますが、どうしても感染の可能性は残ります。
手術は人間が行なう以上、リスクを完全に排除することは難しいといえます。この点をご理解いただいたうえで、インプラントによる治療をご検討ください。
治療後の定期メインテナンス
インプラントによる治療を終えてしっかり噛める義歯を手に入れたとしても、そのままでずっと使えるわけではありません。インプラントは人工歯なので虫歯にはなりませんが、天然歯のように歯を磨いて清潔にしなければ「インプラント周囲炎」という症状を引き起こすことがあります。これは歯周病のようなもので、細菌による炎症が歯槽骨にまで及ぶと、歯肉が下がってきてインプラントが脱落するおそれがあります。インプラントを少しでも長く使っていくには、インプラント周囲炎を予防することが大切です。日々の歯磨きのほか、定期的に治療を受けた歯科医院でメインテナンスを受けていただき、歯科医師のチェックを受けてください。インプラントや周囲の組織の状態、噛み合わせなどを確認し、クリーニングで清潔にします。こうしたメインテナンスをしっかり受けることが、インプラントを長く使うために不可欠です。
インプラントによる治療と
全身疾患との関係
インプラントによる治療を行なう前の検査には、全身状態の診査も含まれます。もし全身疾患がある場合は、インプラントによる治療を実施できるか確認のうえ可否を判断します。患者さまの全身疾患を調べるのは、症状によっては治療がうまく進まない可能性があるためです。
免疫力が低下している場合は歯周病が起きやすく、埋入したインプラントが結合しにくくなることがあります。また、服用している薬によっては手術で出血が止まりにくくなる場合があります。このようなリスクを高める全身疾患としては、糖尿病が挙げられます。このほか、高血圧などの諸疾患もインプラントによる治療に関連します。
持病によっては治療を受けられないケースもありますが、当院では患者さまの全身管理を行なっています。症状をご相談いただきましたら、適切な治療方法をご提案します。
正しい知識で治療を受けましょう
歯科医師にとって、インプラントによる治療は多くの知識や精密な技術、経験が必要です。複雑な情報を整理して分析し、はじめて安全性に配慮した治療ができるようになります。そのため、治療にはさまざまなデメリットやリスクが存在することも否めません。患者さまにはこうした情報も知っていただくことで、インプラントによる治療を受けるべきか適切に判断していただきたいと考えています。
こうしたリスクを見ると不安になることもあると思いますが、必要以上に恐れる必要はありません。インプラントによる治療のメリット・デメリットの両方を知っていただくことで、治療の際に歯科医師にも相談しやすくなり、治療の説明も理解しやすくなります。もちろん、わからないことは些細なことでも結構ですので、歯科医師におたずねください。ご納得いただいたうえで治療に進むことで、患者さまのモチベーションも高くなります。
インプラントによる治療にともなう一般的なリスク・副作用
- ・機能性や審美性を重視するため自費(保険適用外)での診療となり、保険診療よりも高額になります。
- ・インプラントの埋入にともない、外科手術が必要となります。
- ・高血圧症、心臓疾患、喘息、糖尿病、骨粗鬆症、腎臓や肝臓の機能障害などがある方は、治療を受けられないことがあります。
- ・手術後、痛みや腫れが現れることがありますが、ほとんどの場合1週間ほどで治ります。
- ・手術後、歯肉・舌・唇・頬の感覚が一時的に麻痺することがあります。また、顎・鼻腔・上顎洞(鼻腔の両側の空洞)の炎症、疼痛、組織治癒の遅延、顔面部の内出血が現れることがあります。
- ・手術後、薬剤の服用により眠気、めまい、吐き気副作用が現れることがあります。
- ・手術後、喫煙や飲酒をすると治療の妨げとなるので、1週間は控えてください。
- ・インプラントの耐用年数は、口腔内の環境(骨・歯肉の状態、咬み合わせ、歯磨きの技術、メインテナンスの受診頻度、喫煙の有無など)により異なります。
- ・毎日の清掃が不十分だった場合、インプラント周囲炎(歯肉の腫れや骨吸収など)を引き起こすことがあります。